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“旅する巨人”民俗学者の宮本常一氏 [日記]

この前の日曜日、ちょっと時間があったので立川で一番大きな書店をぶらぶらして面白そうな本を物色していた。いくつか興味を惹かれる本もあったが、ぱらぱらと捲ってはみるものの、購入するまでには至らず。そういえば数年前から、フィクションの文学等よりもノンフィクションやドキュメントの方が面白いと感じる。それは本当に素敵な文学に最近接していないせいかもしれないけど。何も買う本が無いな〜、と更にぶらぶらして、もうすぐ終戦の日なので日本の近代史のコーナーに行こうとして、なんとなく“民俗学”のコーナーを通りかかった。そこで久々に宮本常一氏の名前を見かけた。

宮本氏は戦前から戦後にかけて日本全国を歩き回った、日本を代表する民俗学者で、後に武蔵野美術大学の教授も勤めている。その足跡を辿ると日本地図が塗りつぶされるといわれ、歩いた距離は地球4周分に相当すると言う。氏が対象とした分野は多岐に渡るが、特に各地方の庶民の普通の暮らしをつぶさに見て回り、10万点に及ぶ写真を残し、そこには今では失われてしまった日本の普通の人々の生活のルーツが記録されている。それは国家的財産とまで言われるようになっているようだ。

今からもう10年近く前、佐野眞一氏著の“旅する巨人 宮本常一と渋沢敬三”(文芸春秋)を購読したのが出会いだった(写真左)。何でこの本を購入したのかはあまりよく覚えていないが、“ミュージック・マガジン”誌に書評が出ていた様な気もする。こんな学者がいたのか、と驚き、更に影で支えていた渋沢敬三という“偉大なパトロン”の存在にも驚かされた。たかが30〜40年前の話だが、スケールの大きな2人の人物に衝撃を受けた事を思い出す。また読み返してみよう。

それから数冊の文庫化されている本を購読し、ここ数年は特に思い出す事も無く、読み返す事も無く、しかし頭の片隅で常に意識はしていたと思う。で、久々に見かけた宮本氏の名前とその著作や関連書籍(だいたいマイナーなジャンルだから相当大きな書店じゃないと置かれていない)、興味が蘇ってきた。本当は4〜5冊すぐにでも買って読みたいタイトルがあったが、とりあえずその中から2冊を選んで買ってみた。“宮本常一の写真に読む失われた昭和”(佐野眞一著 平凡社 写真中)と“炉辺夜話”(宮本常一著 河出書房新社 写真左)。細かい内容に関してはまたの機会に。とにかく日本で生活雑貨、道具、家具等の生活用品に関わる仕事をする人達は宮本氏の研究の成果に触れる必要が有るのは間違い無いと思う。それを抜きに、ただただ異国に憧れたり、表面的なスタイルの輸入や過去の発掘や新しいカタチの開発ばかりに精を出しても仕様が無いと思う。今のこの混乱した世の中の要因のいくつかは宮本氏の研究の成果から読み取れる様な気もするし、モダニズムやグローバリズムの限界をも感じさせられると言っても、大袈裟では無いと思う。イデオロギーの対立が明確であった時代には革新陣営から攻撃される事も多かったというが、“保守派”が改革をかかげ、“革新派”が新しい考えに対する警戒感を表明する今の時代こそ、ようやく宮本氏の研究を正当に評価出来るだけの条件が整い、必要性が大きくなってきたように思う。それを自分の活動にいかにして取り入れていくか、そこが自分にとっても問題です。100巻を超えるという宮本氏の著作の全てを読破し理解する事は無理だと思うけど、そのエッセンスの欠片くらいは何とか消化していきたいと思う。


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宮本常一

宮本常一を語る
by 宮本常一 (2007-02-22 21:44) 

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