SSブログ

とあるマグカップのこと [日記]

2012年スタート致しました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。とりあえず年明け、昨年末頃に考えていた事などからブログをスタートしようかと思います。

毎朝朝食時にはコーヒーを飲みます。時には豆を手挽きのミルで挽いて。冬のある日、気づいたら最近ずっと使っていたマグカップは、あんまり好きとは言えない、以前から家にあったカップでした。元々そんなに自分が使う道具に対するこだわりは強くないのですが、その前に使っていた、インテリアショップで売られていたちょっと気の効いたデザインの物が割れてしまって、まあ言ってみれば仕方なく、至って消極的な理由で使っていた訳です。

「買い替えようか?」なんて家族に言われて、ふと考えました。「どっちかっていうと嫌いなマグカップ、おれ、気付いたらしばらく使ってたなあ…。別にそんなに嫌いじゃないのか???」。そこで改めてそのカップをじっくり見てみました。まあ、物は悪くありません。国内の一流陶磁器メーカーの製品。購入してからかれこれ20年近く経つ製品ですので、正直時代遅れの空気感がまとわりついている印象です。個人的にも、何度も言いますが、決して好きな柄、デザインではありません。自分では絶対お金を出しては買わないでしょう(笑)。たまたま家にあって、もうそれしか選択肢がほぼ無くなってしまったから使っていただけの、本当にそんなもの。仕入れ先で見かけてもスルーして、持って帰ってこないでしょうね。店に置きたいとも思いません、いや、どちらかと言うと置きたくないって感じで。。。

それでも、まあ、使い続けていた自分。もう一度改めてその絵柄を見てみると。。。描かれているのはレモンの実、そのスライスされた一辺、そして断面、レモンの木の物と思われる枝、そして花。その上にはチェックの柄。なんというか、まじめさが確かにありました。20年程前の物ですので、元絵は手書きで描かれています。レモンの絵だけでなく、チェックにも筆の跡が。とはいえもちろんその元絵からプリントで絵付けされた製品ですから、とくに高級感がある訳ではありません。

でも、レモンの絵を描いた人、チェックのラインを引いた人、色の組合せを考えた人、それぞれの気持ちが伝わってくる様な、いや、確かに伝わってきたように思います。そう、その点に関しては本当に一生懸命な製品だと感じられたのですよ。20年経って、やっと気付きました。いや、それでも決して自分でお店では買わないのですよ(しつこい!)。ですし、今の時代、この柄ではメーカーも製品化には踏み切れないでしょうし、仕入れるバイヤーさんもいないでしょう。でも、まあいいか、と思わせるだけの力はあるように感じました。もうそうなったらこっちも覚悟を決めます。「おし、割れるまで使ってやろうじゃないか!」と思いました。

その一連の自分の心の動きがあった後、何だか不思議な幸福感と満足感が訪れました。嫌いだと思ってた物を何気なく使い続けていた事、自分では買わない物と偶然出会ってそれを結局使い続けていた事、改めてきちんと向き合ってみてみたらそんなに悪い物ではないと感じられた事、そのもののまじめさや魅力が伝わってきた事、それらを踏まえて、使い続ける覚悟を決めることが出来た事。でもやっぱり自分じゃ買わないな、と改めて思った事、そんな自分の一連の感情に不思議な満足感を憶えたのでした。

自分は物を見て選ぶ仕事をしている訳です、古い物を見て。古道具屋と名乗り、既に出来上がった価値基準や時代性や地域性を超えた物選びをしたいと願いながら。そうしてこれからも商売していく上で、何だかいろいろな事を思う出来事でした。物を通して、それを作り出した「人間」に思いを馳せ、例えその結果出来てきた物が表面的には自分と好みを同じくせずとも、何かを感じとることが出来る物も確かに存在するという事。そんな事を思いました。

そして、「必然」では無く、「偶然」の結果すぐそばに存在する物が持つ、何かの「きっかけ」を通してきちんと相対してよく見てみる事ではじめてわかる魅力というものもやはり存在するのでしょうね。「きっかけ」という要素も大切なのだなあと。「きっかけ」はじめてきちんと相対することが出来たりする訳ですから。見ているようできちんと正面からじっくりとは見ていない物も多いのでしょう。もちろん「物」だけに限られた話では無く。

何気ない出来事ですが、自分にとっては何だか大きな出来事って感じだったのでした。そんな事を踏まえて(どんな事かよくわからないかもしれませんが!)、今年もまた頑張っていきます。どうぞこの1年もよろしくお願い致します。

古道具 LET'EM IN 原
nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:インテリア・雑貨

nice! 0

コメント 2

しん

何でも自分で自由に選べたり作れたりすると、自由なようでいて実は自分の殻に閉じこもってしまう。
というお話ですね(^-^)/

by しん (2012-01-08 12:01) 

hara_taka

しんさん コメントどうもありがとうございます。
制約があるからこそ生まれる想像力とかクリエイション、っていうイメージは前からしてはいたのですが、本当に自分の身近な盲点を突きつけられてハッとしました!
by hara_taka (2012-01-09 01:14) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。